書いてみたらこの様だ

ちょくちょくお邪魔させてもらっているサイト『鷹と杉』さんの日記にて、こあとるさんが面白そうなことをやっていたので便乗してやってみたくなりまして。

これは、

【小説の書き方を教えてください】

[1] 「喫茶店でコーヒーを頼んだら紅茶が出てきたので替えてもらった」というあらすじの、

   小説風の単文を書いてください。

そして

[2] どのような細かいテクニックを使っているのか、1行ずつのレベルで解説してください。

みなさんはどんな点に気をつけて小説風の文章を書いているのか、聞きたいのです。

長さや描写の細かさは、普段の自分通りのスタイルでOKです。

またテクニックの説明に必要なのでしたら、話の筋をかえたり、延長してもかまいません。

例はコメント欄に示します。よろしくお願いいたします。


というしばりの質問で、なんでも「人力検索はてな」で一番盛り上がってるらしく。
「同じはてななんだから、日記になんて書かずに回答してやれよ」って思う人もいるかもしれませんが、まぁ、そこはほれ、臆病もんなので・・

とりあえずは小説をば。拙い文章ですがご容赦を。暇で暇でしょーがねー!という人なんかは、その暇潰しにでも読んでみてください。

  • 小説

目の前に置かれたカップを、俺はじっくりと観察した。ねめつけるような視線でそりゃもうカップの中の液体が冷めてしまうくらいじっくりとだ。そうして出た結論は、

「これは紅茶だ」

というものだった。我ながら物凄く間抜けな一言だと思う。

その言葉を聞いて、カウンターにもたれかかるようにして立っていた幼馴染の朱音が心底呆れたとでも言わんばかりに大袈裟に溜息を吐いた。その動きに合わせて、彼女の長い黒髪が揺れる。

「それを言うのにどんだけ時間かけてんのよあんたは・・・」

「俺が頼んだのはコーヒーだ」

俺は憮然とした態度で朱音に向けてカップを突き出した。

元来博愛主義であり、例え注文と間違った商品が出てきたとしても、怒りもせずに受け入れてしまうような人間である俺は、普通ならこの程度のことで店に文句を言ったりするような器の小さな男ではない。(ヘタレでは断じてないぞ。博愛主義だったら博愛主義だ。)

が、幼い頃から毎日のように訪れたこの店で、尚且つ店番はこの世にオギャアと生まれてから今現在にいたるまでの腐れ縁が続くこの女という状況においては別だ。さすがにここで文句の一つも言えないようではそれこそヘタレ確定である。店内に客は俺しかいないという、ここで文句を言わねばどこでいう!みたいな状況になっているし。

「あれ?そうだったっけ?ごめんごめん」

今初めて聞いた、みたいな顔をして驚いた真似をする我が幼馴染に、少しばかりカチンときてしまう。

「そうなんだよ!注文くらいちゃんと取れってんだよ。ったく・・・とにかくコーヒーと交換してくれ」

「え?でもまぁ、今日のところは紅茶で勘弁してくれないかなぁ、なんて思っちゃってるんだけどさ・・・」

ここでいつもの俺なら「はぁ、しょうがねぇなぁ・・・」とか言って現状をただ享受してしまうところだろう。だが、今回は違うぞ。コイツの悪びれない態度が何故か無性に腹立たしく感じてしまったのだ。

「やだ。コーヒーに換えてくれ」

「いいじゃないよ紅茶でぇ・・・そうだ!」

朱音は妙にわざとらしい調子でそう叫ぶと、いったんカウンターの中に戻り、どこからか小さめのケーキを1ホール取り出してきた。ブルーベリーやラズベリーが所狭しと散りばめられた見た目にも大変綺麗なケーキは、料理を得意とするコイツの作らしく実に美味そうだ。

「このケーキも付けるからさ!さっきまで作ってたんだけどね?これはカモミールと一緒に食べるのが一番美味しくて―」

妙に嬉しそうにケーキを説明しだした朱音に、もうどうにも止まらなくなってた俺はつい容赦ない口調で言い放ってしまった。

「ケーキなんてどうだっていいんだよ!俺はコーヒーが飲みたいの!!」

実を言うとケーキは食いたかったんだ。ちょうど午後三時を回ったばかりだし、絶妙に小腹が空く頃合だ。そこにこんな美味そうなもんを出されたら腹の一つもなるってもんだろ?どうだっていいなんて口から出任せを言ってしまったことに少々後悔もしたが、時既に遅しだった。そして、何よりこの台詞が拙かったらしく・・・

「・・・ふーん、あっそ」

見慣れた顔が見る見るうちに不機嫌な表情を形作る。思わずたじろぐ俺だったが、そこはなんとか踏みとどまり、どうにか追撃を続けた。

「と、とにかく!コーヒーを持ってきてくれ!」

俺がそういうや否や、コーヒーセット一式が瞬く間に用意されていった。

「飛ぶような速さで頼むぜー?」

俺は長きに亘った攻防に勝利したことを確信しつつ、コーヒーが運ばれてくるのを待っていたんだが―

「出来たよ。飛ぶような速さでだね・・・?」

「おう!ようやくコーヒーにありつける―」

そう言って振り返った俺の目に飛び込んできたのは、並々とコーヒーが注がれたカップが置かれたコーヒー皿だ。しかし、そのコーヒーセットがまるでフリスビーのように真っ直ぐ飛んで俺の顔面に向かって突っ込んでくるのは完全に予想外だった。てか普通そんなもんが飛んでくるとは思わないだろう?

「ごあっ!」

皿は俺の顔の中心部にクリーンヒットし―

「あっちゃ!あっちゃちゃちゃー!!」

激熱のコーヒーは俺の胸部から大腿部にぶちまけられた。

とんでもない暴挙を働いてくださった当の本人は、大騒ぎをしている俺に向かってまるで幼稚園児のように舌を突き出す仕草、所謂「あっかんべー」を見せつけると、店の奥へと引っ込んでいってしまった。


しばらくして、ようやく落ち着いた俺は一人付近で服に染み込んだコーヒーを拭き取っていた。幸い火傷までは至らなかったようだが、コーヒーが染み付いたこの服はもう着れそうに無い。お気に入りだったのに・・・

「飛ぶような速さでって、本当に飛ばすか普通・・・しかもあんな見事に・・・」

またしても間抜けな一言を聞いてくれるのは、床に転がった割れたカップだけだった。


おしまい

  • 解説になってない解説

はい、というわけでした。ここまで読んでくれたあなたは素晴らしい人です。大好き。(長門風に)

なんだかとってもオタ臭いストーリーですね。ええ、もちろん自覚ありますよ?だってオタだもん。

詳しい解説はメンドクサイので割愛します。もうこの時点で元々の質問なんてどっかいっちゃってますね。
まぁ、これ書いた動機は「限定されたシチュエーションを題材にした小説を書いてみたい」ってのですから、解説なんて二の次になってしまったわけで。

大雑把な解説を書くとするなら、前半で大体の状況説明をして、中盤でヒロインの本来の目的を暗喩的に表現。そんでもってそれが鈍感主人公によって見事に粉砕され、ギャグ展開へ・・・って感じですかね。
この「ヒロインの本来の目的」ってのが分かりにくくなってるのがどうにも私のダメなところですね。まだまだ下手だなぁ・・・


とまぁこんな風に書いて見ました。初めて一人称視点で小説書いて見ましたが、こちらもこちらでやはり難しいですねぇ。やっぱ小説上手い人って凄いや。